弁護士コラム
第48回
『自衛隊員(自衛官)のための外出許可中の退職代行』について
公開日:2024年11月29日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第48回は「自衛隊員(自衛官)のための外出許可中の退職代行」について書きたいと思います。
最近の自衛官の退職代行で一番ご相談が多いのでコラムにしました。
営内(基地内)にお住まいの自衛官の方にとっては、興味のある内容だと思います。
10分程度で読めますので、お付き合いください。
目次
それでは本題に入ります。
1.自衛官の退職代行を行う弁護士はほとんどいない
自衛隊の退職代行は、民間の企業への退職代行とは異なります。また、弁護士の方でも自衛隊の退職代行には対応していない方がほとんどです。ニッチな分野の退職代行と言っても過言ではありません。
今回は外出許可中の退職代行にスポットを当ててコラムを書きますので、より限定的な内容となります。
まず営内(基地内)にお住まいの自衛官の方は、陸士、陸士長、3曹、2曹の自衛官の方がほとんどです。
その際、外出許可中に退職代行をすることで、部隊に戻る必要がなくなります。
なお、部隊に戻らないことから、「行動計画」については、私の方から部隊側に伝えることも同時にします。
中には「外出行動計画」として「近隣」にて許可を取っているケースもありますが、そのまま「遠方」の実家などに帰ることも多く「外出行動計画の内容」についても交渉するケースが最近では増えています。精神的に限界であるのに営内(基地内)に戻ることはかなり辛いものとなります。実際には自殺者の方も出ていますので、遠慮なく私まで相談ください。
2.退職代行の方法
話をもとにもどしますが、私が行う退職代行の際には外出許可の延長許可をもらい、そのまま代休休暇及び年次休暇を消化し、そのまま退職にもっていきます。どのように退職するかわからない場合には、遠慮なく私まで相談ください。
現在、私が外出許可中に退職代行を行う主な理由としては、営内(基地内)にお住まいの場合に部隊側から、弁護士との委任契約の解除を強制するケースが多発したためです。
依頼者と私との委任契約を解除された場合には、退職代行を途中で中止することになり、残念ながら退職ができないケースが発生しました。
依頼者からその場で私に電話連絡をさせて「解除をしたい」と言わせているケースも多くありました。あまりにもひどい状況だと考え、外出許可中の退職代行を実施するきっかけとなりました。
以上のことから、営内(基地内)にお住まいの自衛官の方で、精神的に限界の方は私までご相談ください。力になります。
次に、外出許可中に退職代行をするにあたっては「事前」に「私物の整理」と「整備及び返納」はできる限り願いしております。私物は着払いで送ってもらう場合や後日、取りに行く場合もあります。
外出許可証、身分証、ベネフィットカード等は後日、郵送にて部隊に送ります。また「辞令交付」は郵送にて対応します。
以上、簡単ではありますが、外出許可中の退職代行になります。
もっと詳しい話を聞きしたい自衛官の方は遠慮なく私までご相談ください。
なお、コラム第14回、第26回、第33回、第39回で階級ごとに解説していますので、合わせて確認ください。
より自衛隊の退職代行について理解が進むと思います。
・関連コラム
第14回『自衛官の退職代行【階級2曹】』について
第26回『自衛官(陸士長、1等陸士、2等陸士)の退職代行【自衛隊編】』について
第33回『自衛官(自衛隊員)の退職代行【階級3曹】』について
第39回『幹部自衛官の退職代行』について
を読んでいただきましたら、自衛官の退職代行について理解が進むと思います。お時間がございましたら、ご拝読ください。
3.現在のところ脱柵や捜索にはなっていません
次に「脱柵」になるかどうか、警務隊の「捜索」があるかなどのご質問が多いので、簡単にご回答します。
結論としては、今までに外出許可中の退職代行を数多く行っていますが、全てにおいて部隊から許可を得ております。
したがって、今までのところ脱柵になったケースはありません。
また、今のところ、所在不明隊員として、警務隊の「捜索」が行われたケースもございません。
まとめますと、外出許可中に退職代行した場合で、部隊から外出延長について許可を得た場合には、懲戒処分にはなりませんので、ご自身で正式に退職した場合と同じになります。
今のところ、私が退職代行したケースで「脱柵」になったり、警務隊の「捜索」が行われたケースもありません。退職金は通常通り支給されますので、ご安心ください。
なお、自衛官の退職代行及び脱柵については、コラム第11回についても解説しています。
4.懲戒処分待ちの退職代行について
服務規律違反により懲戒処分待ち(以下、「処分待ち」とする。)となり、長期間退職できないケースもあります。また「処分待ち」のケースには「外出禁止」になっているケースも多くあります。
中には、1年間外出禁止になっているケースもあり「パワハラ」と思われるケースも数多くあります。
私の方では、処分待ちの退職代行を数多く取り扱っています。「外出禁止」の場合には、まずは、外出許可を出してもらう交渉から入り、外出してからは、営内(基地内)に戻らないように話をします。通常であれば、弁護士が外出許可について、話をすればすぐに外出許可がでますので「外出禁止」となっている自衛官の方は、遠慮なく私までご相談ください。
また、処分待ちであっても、外出延長許可をもらう交渉し、そのまま代休休暇及び年次休暇消化し、そのまま退職にもっていくケースも増えています。外出延長許可を受けた上で、いち早く処分宣告から処分までについて交渉をします。
営内(基地内)にお住まいの自衛官で、処分待ちの方でも、遠慮なく私までご相談ください。
処分待ちの退職代行については、コラム第20回、第21回を読んでいただければ、より理解が進みます。
5.労働組合系が行う自衛官の退職代行について
最後になりますが、最近の退職者が増えている傾向を危惧して、自衛隊の部隊側から「退職代行」によって退職するケースは「懲戒免職」になると指導をしているケースもありますが、間違っても、労働組合の行っている退職代行を使わず、弁護士が行っている退職代行を使うようにしてください。自衛官は、組合に加入すること自体が懲戒事由(自衛隊法第64条に違反し、服務規律違反)になります。
某労働組合系の退職代行会社は、自衛官の方が組合に加入することは、法律上「問題ない」と回答しているようですが、明らかに自衛隊法第64条に違反しているので、労働組合系の退職代行会社に依頼するのは、やめましょう。
労働組合系の退職代行は、服務規律違反となり「懲戒対象(懲戒処分)」となりますので、注意してください。
自衛隊の退職代行に迷ったら、遠慮なく私まで相談ください。力になります。
・参考条文
自衛隊法第64条
隊員は、勤務条件等に関し使用者たる国の利益を代表する者と交渉するための組合その他の団体を結成し、又はこれに加入してはならない。
・参考コラム
幹部自衛官の退職代行については、第39回コラムを読んでいただきましたら、自衛官の退職代行について、より理解がすすむと思います。
・参考ホームページ
・関連コラム
第11回『自衛官の退職代行及び脱柵』について
第14回『自衛官の退職代行【階級2曹】』について
第20回『自衛官の懲戒処分待ちの退職代行』について
第21回『自衛官の懲戒処分待ちの退職代行その2』について
第26回『自衛官(陸士長、1等陸士、2等陸士)の退職代行【自衛隊編】』について
第33回『自衛官(自衛隊員)の退職代行【階級3曹】』について
・その他関連条文
自衛隊法第40条
第31条第1項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職を申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認められるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除くては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最小限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。
陸上自衛官人事業務規則第28条(退職)
退職(定年及び任期満了による退職を除き、応募認定退職を含む。) を希望する者は、退職願(別紙第 20)を作成し、幹部並びに陸上幕僚長を任免権者とする准陸尉、陸曹及び陸士については、退職希望日の30日前までに、 順序を経て「陸上幕僚長」に1部上申するものとする。
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者
弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。
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