
弁護士コラム
第166回
『任期途中(取締役)でも退任代行できる理由』について
公開日:2025年9月22日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
任期途中の退任代行のご相談、ご依頼については弁護士の退職代行のページからお問い合わせください。
コラム第166回は『任期途中(取締役)でも退任代行できる理由』についてコラムにします。

目次
1.任期途中の退任代行について
取締役、代表取締役の任期は、原則として、就任から2年以内に終了する最後の事業年度に関する定時株主総会の終結時までです。
例えば、事業年度が9月1日から8月末日までであった場合に、令和7年11月1日に取締役として、就任した場合に、令和8年10月20日が定時株主総会であった場合に、1任期が令和8年10月20日になります。
※会社法第332条第1項
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
※再任された場合には、再任され任期が延長されます。
他方、株式の譲渡に制限のある企業(一般には中小企業)では、原則として、定款によって、任期を最大10年まで伸ばすことが可能です。
※会社法第332条第2項
前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
取締役の任期が10年の場合に、任期途中で退任代行して退任することは可能でしょうか?
結論的には、原則としていつでも辞任できますので、任期途中であっても退任代行して辞任することができます。
会社法第330条
※株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
会社と取締役との関係は委任契約であるところ、民法の規定では、委任契約はいつでも解除できるとされているからです(民法651条1項)
したがって、取締役や代表取締役の退任代行により、いつでも退任することができます。
※退任したいといえばその日が退任日となる即日退任になります。
次に、取締役と会社との間で取締役任用契約が締結されており、その中で、辞任の時期に制限を加える特約が定められているということがあるかもしれません。では、その特約は有効でしょうか。
大阪地裁昭和63年11月30日判決は、会社側が、一定の取締役の承認がなければ取締役を辞任できない旨の特約があったと主張したのに対して、「何時でも取締役を辞任することができる自由に反する特約は効力を有しない」と判断しています。
2.まとめ
今回は、任期途中の退任について解説しましたが、任期途中であっても取締役が辞任、または、退任するのは自由にできます。
取締役の退任代行についてご相談がありましたら、遠慮なく私までご相談ください。
※退任登記手続きについて会社がしてくれない場合には、第145回『 取締役(役員)や理事の退任登記抹消されない場合【退職代行】』について、をご参照ください。
※退任に伴う損害賠償対応については、コラム第23回『取締役の退職代行(辞任代行)』について、をご参照ください。
・参考コラム
第49回『業務委託の退職代行』について
第68回『医療法人社団理事(役員)の退職代行』について
第111回『代表取締役の退職代行(退任代行)がおすすめな理由』について
第165回『代表社員の退任代行は弁護士が必須な理由』について
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者

弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。
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